『カメラを止めるな!リモート大作戦!』は、フィクションだけどフィクションじゃない。——社会的背景を活用した素晴らしい作品

『カメラを止めるな!リモート大作戦!』は、フィクションだけどフィクションじゃない。——社会的背景を活用した素晴らしい作品

レビュー

2020年5月1日に、YouTube上で
短編映画『カメラを止めるな!リモート大作戦!』本編、通称”リモ止め”が公開されました。

4月3日に上田監督が完全リモートでの映画制作を着想。
13日に制作が公に発表。4月中旬に撮影がスタートし25日に全ての撮影が終了。
5日間の編集を経て完成。5月1日に公開。

https://youtu.be/HTk2wqBxVfY

この制作のスピード感があったおかげで、

私たちはGWのおうち時間に、このコンテンツを楽しむことができています。

このコンテンツの良さは、
何を隠そう『社会的背景の共有』であると思っています。

不安の渦中にいる視聴者。そこから生まれる共感の嵐。

新型コロナウイルスの感染拡大。

未曾有の事態に自粛をせざるを得ず、世界中が不安定になっている、
現在の社会情勢をそのまま反映した作品。

大ヒットを記録した『カメとめ』の登場人物たちが、
人とのつながりが断絶されそうな中、
ビデオ通話を軸にコミュニケーションを取るさまは

台詞のひとつひとつが共感を産み、心に響く。

明るくなりたいけどなれない人が、
心から楽しめるエンターテイメント作品でした。

キャストだって渦中にいる当事者。フィクションだけど、ノンフィクション。

俳優や女優(役者)は、

映画や演劇の中で、台詞、身振り、表情などで、
その登場人物に扮し、立ち振る舞います。

でも、その多くでは、
登場人物と役者の背景は大きく異なっていて、
遠い、別人にすぎないんですよね。

でも、今回は登場人物と役者との背景が合致しています。

新型ウイルスが流行し、自粛せざるを得ない状況。
当たり前のことができない苦難。

そんな背景が合致した人、
もはや当事者であるキャストさんの一つ一つの言葉は、

見るものを共感させ、感動させ、勇気づけてくれるものでした。

真魚さん(妹役)が涙ながらに語るシーンは圧巻

思い出したのは、
アニメポケモンで、サトシとゲッコウガの別れのシーン。

サトシの最後の台詞に、
多くのポケモンファンが涙しました。

サトシの声を演じる松本梨香さんは、
放送後、Twitterでこのように述べています。

『サトシゲッコウガと別れる場面、
12年半連れそった梨香の愛犬ハロへの想いをサトシの台詞に重ねました。』

https://twitter.com/rica_matsumoto3/status/789278602474815488

プロである、演技がうまい、というのはもちろんですが、

それ以上に登場人物と役者自身の背景が重なるほど、
演技は迫力を増す
のでしょう。

そういう意味で、
フィクションだけど、フィクションじゃない作品だと思いました。

さすが、『カメとめ』制作の上田監督とパンポコピーナ

他にも良いなと思った要素が多数ありました。

笑いが少ない世の中で、
”くすぐり”をテーマにすることで、

誰もが思わず笑顔になり、
また、全年齢が見られるカジュアルさ
を実現したこと。

人と会えないという制約の中、
個人で撮った素材それぞれを用い、
短期間でストーリーを作りあげた編集技術・表現力も見事。

カメラを止めるな出演キャラクターというIPをふんだんに使いつつ、
同居による矛盾を防ぐため、
『留学中』として妻と夫を隔絶させた設定も見事。

ウイルスという強大な敵を前にしても、

創意工夫によって、人はつながり、感動を生み出せる。

その可能性を再認識した作品でした。